絵物語「人魚星」

(話の内容)
地球人に恋した人魚の悲恋。人魚を育てた龍がやさしく見守る。

(登場人物)
あたし:龍に育てられたメスの人魚。10才位。
王子様:地球から来た少年。11才位。
お父さん:人魚を娘として育てたオスの青龍。25才位。
ペリカンのおばさん:40才位。

(本文)
ある日、お空の向こうから宇宙船がやってきたの。
宇宙船はふらふら飛んだあと、ピカッと光って、落ちてきて、びっくりしちゃった。
湖の中にもぐってみたら、地球人がたくさん死んでいたの。
一人だけ、船の中で、まだもがいている人がいて、
その人がとてもきれいな人だったから、どうしても助けたくて
大声で叫んだら、お父さんがやってきて
船ごとくわえて助けてくれたの。

どこかの星の王子様だって、ペリカンのおばさんが言っていた。
でもね、王子様はね、お父さんのことが嫌いなの。
お父さんが龍だからこわいのね。
だからお父さんには私達には近寄らないでって頼んだの。
王子様はあたしのことをミューって呼んでくれたわ。
ミューズっていう美の女神様からとった名前だって。
とーっても素敵な名前、うれしかった。

「おまえは人魚だから、あのお父さんの子どもじゃないよ」って
王子様から言われてショックだった。

でも、すぐに忘れて、ハスの上と水の中で王子様と競争したの。
貝がらやハスの実を取ってくる遊びもしたし。
王子様は、だっこしたり、頭をなでたりして可愛がってくれたの。

ある満月の夜、王子様がハスの上でしょんぼりしていて
「どうしたの」って聞いたら
早く地球に帰りたいって泣くのよ。
王子様もまだ子どもだったんだ。
「マナがいるから泣かないで。ずっとそばにいるから」といってなぐさめたの。
それから毎日、「死ぬまで王子様のそばにいられますように」って神様にお願いしたわ。

でもね、ある日、地球からお迎えの船が来ちゃった。
いっしょに連れてって頼んだけど、ダメだった。
ペットは飼えないって。

「僕は仲間のとこへ行かなきゃならない。
だから、おまえは仲間の人魚のところへお行き」って、王子様は言ったの。
「もう一回だけ抱っこして」って言ったけどダメだった。
どうしてかな。

地球へ帰ったら、王子様はあたしのことを忘れちゃうのかな。
大人になったら迎えにきてくれるのかな。
また抱きしめて頭をなぜてもらえるのかな。

お父さん、いままでほっぽらかしといてごめんなさい。
食べたかったら食べてもいいよ。
優しく抱きしめられたら、つらいから。

                       (おわり)